ドメインを手放すリスク

2025.05.12

普段ホームページの制作を請け負っていますが、作るだけでなく残念ながら廃業などによりそのホームページを終了させるということもあります。その際、同時にドメインも手放すことになりますが、これが思いのほか大変な作業になります。

これからドメインが必要な方や、単にドメインを変更するという場合にも、このリスクについては知っておいてほしいので、対策を含めまとめてみようと思います。

この記事の要約:ドメインを手放す場合、インターネット上に残る痕跡が第三者に悪用される恐れがあります。特にco.jpドメインは対策が取りづらくリスクが大きくなります。この記事ではその詳細と手放す前にできる具体的な対策についてまとめています。新しくドメインを取得する場合にも参考にしてください。

ドメインが重要な理由

まず、この後の内容に少し関係があるので、ドメインそのものについて簡単に説明します。

ドメインの取得というのは、「example.com」など任意の文字列を使用する権利を買うというものです。誰もが知っている通り、この文字列は住所のようなものになり、ブラウザに打ち込むとホームページが表示されます。

これはドメインを使って、ホームページが存在するサーバーを見つけるということをしています。

実際のサーバーは「198.51.100.0」のような数字の名前がついていますが、数字は覚えづらく、すぐに識別できないのでその代わりにわかりやすいドメインを使って間接的にサーバーを探せるようにしています。これがドメインを使用する目的です。この仕組みはメールにも利用されています。

ドメインはサーバーを見つけやすくするだけのただの文字列ですが、この仕組みによって、名刺やパンフレット、SNSのプロフィールなどに使われ、段々と企業やお店の「顔」となっていきます。そして時間と共にそのドメインは価値を増していきます。

具体的に検索エンジンの順位や、SNSでの紹介など数多くの「痕跡」のことです。これが宣伝効果を生む仕掛けとなります。

ドメインを手放すと起きること

そうして価値が高められたドメインですが、その価値があればあるほど手放した後の危険性が大きくなります。

いざ、サーバーやドメインを解約し、使用する権利を手放しても、ドメインの「価値」の部分はインターネット上に残り続け、会社やお店がまだあるかのように振る舞います。

そして問題なのは、ドメインは解約して一定期間が過ぎると、誰でも同じドメインを取得できる状態になります。

時間が過ぎても、インターネット上にまだドメインの「価値」が残っている状態で、全く無関係な第三者がそのドメインを取得し、その価値に「タダ乗り」することができます。場合によっては悪用もできます。

わかりやすいデメリットとしては、かつてのお客様や取引先の関係者に対して損害を与える可能性があるという点です。

手放す際にできる対策

できる対策についてまとめます。

まず重要な点として、この対策をしている間、サーバーやドメインを解約できません。解約すると何もできなくなるので、終了に向けた準備期間を確保してください。

またドメインを変更し新しいものにするという場合も、古いドメインに対しては同様のリスクがあり、対策が必要です。

1. ドメインの維持を考える

この問題について一番安全な方法は「ドメインを手放さないこと」です。ほとんどのドメインが年間数千円なので、リスクを一切取りたくないという場合は、ドメインは手放さないという選択肢を検討してください。

ただ手放さない場合も、サービス等を終了するため下記の対策は必要です。一通りの対策の後、サーバーの方は手放しても構いません。

2.事前のアナウンスと削除依頼

ホームページやSNS、あるいはお客様へのメールにて、会社やドメインの終了を事前に告知します。

また関連会社や顧客のホームページからリンクが貼られている場合は、その削除もお願いしてください。

その他の外部リンクについては、全て削除依頼を出すというのは現実的ではないので諦めることになると思います。

3. ホームページの停止コード

サービスを終了する際に、ホームページで終了画面を表示し、その画面から「停止コード(410)」を返すようにします。これは普段目に見えないところでやり取りされる特殊なもので、検索エンジンはこの停止コードを見て検索結果から除外するようになります。

ドメインの価値は検索エンジンの検索結果としても表れているので、この「検索エンジンからリンクを削除する」という点が、対策の中で一番重要かもしれません。これが残っていると第三者に利用(悪用)される可能性がより高くなります。

4. ドメイン(DNS)の設定

メールの利用も終了することになります。そのため終了後もスパムメールなどに悪用されないように「このドメインを使ったメールアドレスからメール送信は行いません」という宣言が可能です。これをすることで、メールを受信する側がスパムかどうかを判定できるようになります。

具体的な方法は割愛しますが、これはドメインのネームサーバー(DNS)にて行います。

これも時間をかけて行うアナウンスのようなもので、できるだけ長くドメインを維持する必要があります。

5. この停止状態を1年以上は維持する

ドメインの価値をできるだけゼロに近づけるために、上記の設定を長く維持します。

一般的には1年から数年は必要と言われますがドメインの「価値」次第です。目安としては最低1年ほどだと思います。

6. co.jpドメイン特有の問題

ドメインの末尾が「co.jp」となっている場合、更に問題があります。このドメインは日本国内の法人にのみ許可されているドメインで、取得には審査もあるため、信頼の証にもなっています。

ただ裏を返すと、法人を終了することでドメインの所有資格も失い、すぐに手放すことになります。ドメインの維持ができないため、前述の対策が一切できません。

ドメイン終了後の凍結期間や取得時の審査があるとは言え、その後第三者に悪用される危険性は小さくないと思います。

できることとしては、「事業サービスの終了」と「法人格の終了」の間にできるだけ時間を設け、その間に前述の対策を行うということになると思います。

参考ドメイン名の廃止に関する注意 – JPRS


ドメインが重要なものであることはわかっているつもりですが、いざそれを終了するとなると、その重さがよくわかります。

よくサービス開始を急いでドメインを慌てて取得するということがあると思いますが、ドメインは大切なブランディングの一つでもあり、一度取得すると簡単には変えられません。

今はたくさんのドメインの種類があるので欲しいものが取得しやすくなっています。これから新しいドメインを取得するという場合も、安易に妥協せず、後で変更しなくて済むよう慎重に検討してください。

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