サイト制作ツール「STUDIO」を試しています。誰でも綺麗なサイトが作れるというサービスはもうあまり珍しくないと思いますが、自分のような業者向けとしても作られているようなので、以前から少し興味がありました。使ってみると少し気になる点もあったのでまとめてみます。
STUDIOの特徴とその感想
気になった特徴としては以下の点。ただ機能は日々変化しているので現時点での感想です。
- 余白や行間の細かな設定ができる
マージンなどの余白や文字間、行間をかなり細かく操作できます。逆にしっかりカスタマイズしようとするとそれなりに大変。 - 制作時のブラウザはPCでのChromeのみ
かなり複雑なことをしているので仕方ないと思います。 - パーツのクオリティが高い
利用できるパーツレイアウトのクオリティが高く、ほぼデフォルトのまま使える。操作さえできれば、プロトタイプを作る感覚で簡単にサイトが作れそう。 - レスポンシブ対応
各端末のサイズでチェックしながら制作を進められます。 - 常にJavaScriptによる出力
Nuxt JS(Vue.js)による動的な出力のため、制作中や公開ページの描画に若干の違和感はあります。 - ホスティングサーバでもある
制作ツールであると同時にホスティングサーバでもあります。日本のサービスのためか表示速度も問題ないように思います。ただしメールサーバーはありません。
編集機能はかなり充実
- CMS(ブログ記事)
- パーツの共通化
- Webフォントの指定
- 縦書き
- 文字間・行間の操作
- レスポンシブでのパーツの表示・非表示
- 外部RSSの読み込み
- メールフォーム
- モーダル
本当にノーコードでクオリティの高いサイトを作ることができます。必要なものはデザインと運用だけ。
細かいところで気になったのは、Webフォントがパーツごとに自由に選べること。うまく処理していたとしてもやはり心配なので、日本語は全体で1〜2種類に決めておいた方がよいと思います。
また公式ページではモリサワの新ゴが使われていますが、一部表示に不具合もありました。これはSTUDIOの問題ではないと思いますが、初めて使うフォントの場合は長い文面でのチェックが必要になりそうです。
プランの違いはCMSのページ数
下位プランはCMS(投稿)が5記事までとなっていて、表面上はこの点が上位プラン(1,000記事)との違いになっているようです。
CMS以外のページについては数に制限はないようなので、下位プランでもやろうと思えば、一覧と記事ページを毎回手作りしていくことはできそうです。ただ将来記事が増えそうな場合は素直に上位プランにした方が良いと思います。内容を考えると上位プランでも安いように思います。
STUDIOを業務で使えるか?
個人でサイトを持つという場合はほぼ問題ないと思いますが、業務としてはいくつか躊躇する部分もあります。実際に業務として利用されているサイトもあるのでその場合はかなり割り切っているように思います。
ブラウザの問題
当面のネックは、サポートブラウザからIEが除外されている点(参考:STUDIOで作成されたWebサイトの閲覧環境)。 サイトの目的によっては問題ありませんが、今もIEのシェアがなかなか減らないのでハードルにはなりそうです。
実際にIEで確認してみましたが、「このサイトは、Internet Explorer での表示に対応していません」と表示され、一切閲覧できなくなるようです。
また各ブラウザでの表示やレスポンシブ対応についても、スタイル設計の中身が見えない分、実機などで十分なチェックは必要だと思います。機能やできることが多いため、各パーツの癖を覚えるまで学習コストはかかりそうです。
データの移行方法がない
この点が一番のネックかもしれません。管理画面やヘルプなど見る限り、エクスポートだけでなく、インポート方法もないようです。通常、業務ではサービスの終了や他への移行も想定しなくてはいけないので、なかなか踏み切れないように思います。
何でもできる
もう一点、管理画面から何でもできるというのはネックになります。
WordPressでは、編集範囲をある程度限定できるため運用面も保証しやすくなっています。ただSTUDIOの場合は自由度が高すぎ、納品後もデザインを簡単に変更できるため、トラブルも起こりそうです。しかも大幅に変更してしまうと、おそらく正確に戻すことができません。依頼する場合は、CMS機能だけ使用するなど取り決めも必要になりそうです。
STUDIOを使用する前に考えること
これから利用される際に検討しておくと良さそうな点をまとめてみます。
1、ずっと使い続けるかどうか
上にも書いた通り、一度作ると他へ移行する方法がありません。独自サービスのため、デザインの移行も難しいと思います。そのためずっと使い続けるか、あるいは使い捨てのサイトにするかの判断が必要になります。
サービスが終了する可能性ももちろんあるので、「とりあえず今、コストをかけずに効果を出し、あわよくば長く続ける」というイメージで考えるといいのかなと思います。
2、自らデザインするかどうか
STUDIOは直感的で自由にデザインできるため、一般の方にも思い通りのサイトが作れるようになると思います。ただ独自のツールのため、その操作スキルは他ではあまり役に立ちません。そこに大切な時間と労力をかけるのはリスクもあります。STUDIOに使い慣れたデザイナーに依頼する方が良いかもしれません(長谷川はまだ使い慣れてはいません)。
3、日々記事を書くかどうか
記事(CMS)の有無はプラン選択に影響しますが、書いたものが他へ移行できないため、やはり記事をメインとしたサイトは避けた方がよいと思います。
主にサービスや商品紹介がメインで、更新情報がそこまで多くないというコーポレートサイトなどが理想です。
まとめ
今のところサーバの品質など見えていない部分も多く、いろいろと慎重な判断が必要ですが、やはりツールのクオリティや操作性はかなり優位性のあるサービスだと思いました。
起業したばかりでとりあえずサイトが必要な場合や、ともかく自ら制作したい場合、あるいは一時的なキャンペーンサイトのような形であれば、うまく利用できそうです。