サイト用写真の撮り方とカメラの選び方

2016.01.08

サイト制作時に写真のクオリティはとても重要です。
普段から素材写真に触れていて思うのは、撮影に関するセンスよりも知識の方が重要という点。対処方法がわかっているかどうかで結果が大きく違うように感じます。

個人的にも写真やカメラが好きなので、デザイナーという枠を少し超えてカメラの選び方、撮影の仕方をまとめてみます。基本的なことばかりですが、デザイナーからの要望も書いています。参考にしてみてください。


購入時のスペックの見方

1、最も重要な撮像素子

カメラを購入する際に最も重要な「撮像素子」。光を受け取るセンサーのことで、デジカメ以前のフィルム部分にあたります。「フルサイズ」というのは文字通りフィルムとほぼ同じ面積ということ。

いくつかサイズがありますが、大きい方が良いと考えてください。最低でも「APS-C」を選び、予算的に可能であれば「フルサイズ」としてください。ほとんどの場合、大きいほど高価です。1型、1/2.3型などありますが、いずれもかなり小さな面積です。

技術的な部分なので想像も含みますが、センサーの面積は単に撮影できる範囲の大小ではなく、物理的に受け取る光の情報量の差になります。カメラはセンサーが受け取った情報から色を作るので、その光の量が多ければ多いほど、より自然な色(あるいはより好ましい色)を作ることができるのだと思います。

また写真の色は「作られる」という点も知っておくとよいと思います。仮に同じセンサーでもメーカーごとに色の作り方は異なります。メーカーの技術者が経験などに基づいて手作りする色なので、その違いは実際に写真を見て判断することになります。

2、画素数は気にしない

「画素数」というのは、センサーで受け取る光の情報を何分割するかということですが、必ずしも写真の良さを左右する基準にはなりません。面積の広いセンサーであれば画素数を大きくできるのでこうした判断基準ができたのだと思いますが、画素数が大きいからといってセンサーが大きいとは限りません。画素数を競う時代もありましたが、あまり気にしなくてよいと思います。

3、レンズの明るさはF2.8以下

これは主観も入りますが、きれいな写真をよく見ると写真の全てにピントが合っていないことが多いと思います。背景がわからないくらいにぼけていたり、皿の上の料理でもハンバーグにピントが合い、付け合わせの野菜がぼけていたりします。

レンズの明るさを示す「F値(絞り値)」が小さいほど、背景がぼけやすくなります。これはぼけが重要という訳ではなく、ピントが合う範囲を狭くでき、大切なものをより際立たせることができるという点に意味があります。また、例えば室内での商品撮影で周りに写って欲しくないものがあってもうまくぼかして隠すことができます。隠したものによって色合いが増え、かえって面白い表現になることもあり、純粋に隠す以上の効果を狙えます。

ただ明るいレンズほど高価になる傾向があります。高価な機材ほど良い写真が撮れるというのは、カメラの「センサー」とレンズの「F値」による部分が大きいようです。

4、レンズは単焦点で十分

明るいズームレンズはかなり高価ですが、室内や人物の写真の場合はズームはあまり必要ありません。単焦点レンズで十分です。

また単焦点でも標準と広角の違いがあります。これは撮影できる広さを示します。センサーのサイズにもよるため数字では区別が難しい場合がありますが、数字が小さいほど広く、大きいほど狭くなります。これは撮影する場所や対象などによって決めてください。例えば、室内でたくさんのものを撮ろうとする場合は、数字が小さい広角レンズが便利です。

5、条件に合うカメラ

上記を踏まえ、ミラーレス一眼の本体と明るい単焦点レンズの組み合わせがお勧めです。

Canonであれば、「EOS M」シリーズの本体と「EF-M22mm F2 STM」(レンズ)で十分に綺麗な写真が撮れます。

予算が許せば「EOS 5D」なども検討してみてください。フルサイズでプロも使用するカメラです。

6、カメラを写真から選ぶ

Flickrというフォトストレージサービスがあります。このサービスの中で「カメラごと」の写真が確認できるページがあります。世界中から集まる写真の中から、特に綺麗なものを見ることができるので、ここでメーカーごとの色や性能の違いも確認できます。

Camera Finder – Flickr
https://www.flickr.com/cameras

また日本にも同様のサイトがあります。こちらの方が見慣れた風景でリアルに判断できるかもしれません。

GANREF
http://ganref.jp


撮影のコツ・注意点

1、ぼけの作り方

一つ基本的なこととして「ぼけ」はOKですが、「ぶれ」はNGです。撮影時は三脚を使うか、カメラを持つ手は動かさないようにしてください。

ぼけはカメラの「F値・絞り」で制御します。F値を最小(=開放)にしてください。

対象となるものと、そうでないものを区別して、撮影の向きを考えます。例えば、正面や真上からの撮影より、少し被写体に近づいて斜めから奥行きが見えるようにすると、どのようにぼかすか判断しやすいと思います。

2、暗い写真や意図しない影はNG

室内の撮影で外からの日差しが強いとうまく撮影できないことがあります。適度にカーテンを閉めるなどし、被写体が撮りたい色になるように何度か撮影しながら光を調整します。

天気が悪くどうしても全体が暗くなる場合もフラッシュは使わず、カメラの設定で「露出」を少しだけ上げると改善します。ただ光の情報量が変わるのでやりすぎは危険です。露出を操作する際、暗い部分がきちんと暗いままとなるようコントラストにも注意してください。

それから露出などこうした設定全般に重要なことですが、設定の値は日々チェックする癖をつけてください。前日の設定が残っているとその日の撮影がすべて無駄になってしまうこともあります。

また「影」にも注意します。被写体の影や構図の外にあるものの影が邪魔になることがあります。レフ板など白い板や布で光を反射させるなどして、意図しない影は極力なくすようにしてください。


サイトにふさわしい写真

サイトのトップページなどに使用するイメージ写真と、ブログ記事や商品のようなコンテンツ写真は分けて考えます。

1、トップページのイメージ写真

被写体の正確さよりもその雰囲気を感じてもらうための写真です。構図としてはよほどの意図がないかぎり、平面的なものより立体的に奥行きを感じられるものの方がよいと思います。そこに立った時に目に入ってくる風景を写すと考えます。

この時、全体の構図はできるだけ決めないようにしてください。これは写真のどの部分を使うかという判断をデザイナーに任せるためです。ちょっとした範囲の違いでデザインしづらくなることがよくあります。多少無駄なものが写っても構いません。必ず広く撮影し、切り抜きを想定した構図としてください。

またこうしたイメージ写真の構図として重要なのは、キャッチコピーなどテキストが乗せやすいかどうかです。
写真の中で、色が一色になっている部分をある程度大きく作ります。空や壁、ぼかす範囲を広くとることでテキストが配置しやすくなります。ほぼ一色であればどのような色でも構いません。全体が煩雑な写真は、テキストの置き場がなくデザインに苦労します。

  • 構図は立体的にして、ぼけを活用
  • 切り抜きを想定して広く撮影
  • テキストの置き場所を作る

2、コンテンツ写真

ブログ記事などであれば、内容は様々なのでそれに合ったものということになります。スマホのカメラでも十分かもしれません。ただしブレはNGです。傾きや色合いも必ず調整してください。1枚でも安易な写真をアップするとその後がどうでもよくなってしまいます。一定のクオリティを保つようにしてください。

またショップサイトの商品ページにて雰囲気を重視した写真ばかりにすると「実物がよくないのでは」と不安にさせる可能性もあります。実物に近いものも含めるようにしてください。

  • 基本、記事内容に合っていればよい
  • 場合によってはスマホ写真も可
  • イメージよりも自然であること=具体的に伝えたいことを重視

写真はシャッターを押すまでの数分、数秒でここに書いているようなことをぱっと考えなくてはいけません。プロのカメラマンには日常だと思いますが、ともかく知っているだけでも結果を大きく左右します。すでにサイトを運用している方も、カメラのスペックや撮影方法を一つ一つ再確認する機会を作ってみてください。

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